現代新人魚伝説 5 [海のお話し]
2枚目はよりイラスト・漫画調に。
驚くほど店とか場所とか知らなくて、方向音痴?
僕の数少ないレパートリーの店の場所やっとひとつ教えられての、待ち合わせ。
「このカクテル、いっけるー。」「おいしいねー。」
店を出ると、蒸れた暑さがまだいっぱい。その中に、僅かに潮の香がしたのは気のせいだったのだろうか。
真夏の夜の夢
現代新人魚伝説 7 東京の海は重たいの [海のお話し]
それからぼくたちは何度か会い、互いの部屋を訪れもした。
彼女のアパートの部屋はとても質素でエアコンだけは妙にきつく、それなのに湿っぽかった。
島のことは何度か訊いたがはぐらかされ、そのままだった。
ある休日、二人で遅いランチを取った後近所の公園をぶらついた。
浮かない顔の彼女は自宅近くを流れる隅田川の橋の上まできて
川面を見下ろしながらつぶやいた。
「ここまで海の水が入って来るのよ。溶けていけるわ。」
「東京の海は暗く重くて冷たいの。もう帰らないと。」
「え?な、なに、なんだって?」
吹き抜ける風に秋の海の気配を感じた。
現代新人魚伝説 8 [海のお話し]
その日、彼女の部屋に行くと確かに約束していたんだ。
仕事が遅くなり、合間に何度か連絡取ろうとしたがつながらなかった。
駅から商店街を抜け狭い迷路のような住宅街の暗い路地を彼女のアパートに向かっていたつもり
だったが迷いたどり着けなかった。
こんなことは道に迷うこと自体初めてで、疲れているのかと思いながらなんとか駅に戻った。
翌朝、ポケット地図と住所のメモを持ち再び訪ねた。
「えーっと、ここをまがった先の道の反対側、高速の手前、あれ??太い道路にでちゃった。」
住所、番地が地図と微妙に違うなあ。
西墨田2丁目15番9号ってメモにはあるのに地図には出てないし、順番に振ってあるとしたら、
原っぱか、堤防の向こうじゃないか。
GPSで見ても狂って川の向こうに自分が居ることになってる。
少し寒気とめまいを感じながら呆然としていると、「楽しかったわ。」不意に車の騒音に紛れて聴こえた気がした。
なぜかあのときの海の中と同じ気配を感じ、あわてて虫の鳴く原っぱの草むらをかきわけ、堤防をよじ登ってみた。
そこには見たこともない貝殻と、妙に古びた、でも見覚えのあるサンゴのネックレス。
貝殻を耳に当てると波の音が聞こえる・・・子供の時教わったそんなことを思い出した。
了
種明かし フィクションです。
お話、絵、写真:Unit Mio
登場人物:
男:太郎ちゃん:不明
女:人魚、有美ちゃん:不明
脇役:ムラサキウニ、クロアワビ、カレイ、アカヒトデ、ミドリイソギンチャク、ナゾノカニ、タヌキ、タカラガイ、ナゾノカイ1、ナゾノカイ2
ロケ想定地(?):石垣島、伊豆大島、渋谷、南青山、鐘ヶ淵水神大橋近辺、東武伊勢崎線車内